株式会社THE GUILD

【Media UX LAB連載コラム 第1回】
どんな価値を創造すべきか、どのように価値を届けるか。
ユーザーの体験全体を戦略的に設計するUXデザイン

  • 株式会社THE GUILD

    渡邉 真洋

通信環境の飛躍的な進歩により、ユーザーの行動様式は年々劇的な変化を遂げています。時代は、モノ消費からコト消費へ。消費者が求めるものは変化しており、近頃ではユーザーオリエンテッドにサービスを構築するニーズが高まっています。

このような背景の中、CCIでは、2020年8月、UX/UIデザイン、UXリサーチのエキスパートと共にメディアビジネスに最適なUXデザインの研究を行う「Media UX LAB」を設立いたしました。

連載インタビュー第1回目は、LABに所属するUXエキスパートのTHE GUILD/渡邉真洋様をゲストに迎え、メディアビジネスにおけるUXデザインについて多彩な視点から語っていただきます。

スマホの進化がUXデザインの役割を拡張

CCI:

ここ数年「UXデザイン」というキーワードを耳にする機会が増えてきました。なぜ今、UXデザインが注目され、必要とされているのでしょうか。

渡邉:

そもそもUXという概念が提唱されたのは、1990年のドン・ノーマンによる著書「誰のためのデザイン?ー認知科学者のデザイン言論」だという一説があります。既に30年ほどの歴史をもつUXが、昨今注目されている理由は、何と言ってもスマートフォンの台頭が大きいですね。


これほどリーチが広く、利用者のあらゆる生活の側面に深く根ざし、インタラクティブな体験を提供する製品はかつてありませんでした。テレビはリーチや利用時間でいえばスマホに近い端末ですが、ニュースはもちろんエンタメ、動画コンンテンツなどにしても、提供者側が一方的にコンテンツを届けるものでインタラクティブ性は皆無です。


逆にスマホは、エンタメ、ショッピング、ゲーム、チャット・メール、カメラ...etc.、一つのデバイスの中で色々な体験ができる上、アプリは常にアップデートを繰り返すことが可能です。作ったら終わりではなく、常に新しいストーリーが追加され、体験できる。開発者は素早くPDCAを回し、継続的なUXデザインの改善を行うことができるのも一因といえるでしょう。


また、市場が成熟期であることも理由として挙げられます。Google TrendsでUXの兆しが見え始めた2009年は、ちょうどiphone 3 GSがWWCDで発表された年となります。そこからスマートフォンの普及が爆発的に進むわけですが、現在その伸びは一服しています。


導入期の頃は、新機能のアプリを一定以上の品質で提供するだけで、十分な支持を得ることができました。でも、現在200万以上ものアプリがあるといわれる中、斬新な価値提案をすることは困難を極めます。その中で、既存のカテゴリ内で優れたUXを提供することが差別化のポイントになってきていると考えられます。

メディアビジネスにおけるUXデザインの必要性

CCI:

UXはよく大手プラットフォーマーやゲーム事業社等でいわれているイメージですが、広告収益が主体となるメディアビジネスにおいてもUXデザインは必要でしょうか?

渡邉:

そうですね。中長期的に収益を上げていくためには、例えばWebサイトにユーザーが訪れ、定着して何度でも見てもらえることが重要になります。特に日本は少子高齢化でパイの広がりは見込めませんから、今いるユーザーのロイヤリティーを高めていくということが、より大切になっていくでしょうね。


また、2020年5月に、Googleが検索ランキングの指標を「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」と既存の指標を組み合わせると発表しました。細かい説明は割愛しますが、簡潔にいえば包括的なユーザー体験の向上を実現するために、GoogleがよりUXを重要視するスタンスを表明した流れであるといえます。

多くのメディアにとってGoogleの方針は最重要項目の1つであるので、優れたUXデザインは以上の声明からも不可欠だと思います。

CCI:

ユーザーフォーカスなメディア運営をすれば、Googleはそれを評価し、結果それが中長期的にビジネスの成果にも繋がるということですね。

渡邉:

はい。これは昔から変わっておらず、本質的かつシンプルで強力なセオリーです。ただ、一方で、多くのメディア従事者の方は短期的なPVやユーザー獲得を追求する傾向がいまだに強いように思いますね。

持続的なビジネスを作っていく上では、そこが現在のメディアビジネスの課題ではないかと考えています。


※Web Vitalsとは、GoogleがWeb上で優れたユーザー体験(UX)を提供するために不可欠であるという考え。


※Core Web Vitalsは、Web Vitalsの中でも特に重要な3つのことで、読み込み時間(LCP)、インタラクティブ性(FID)、ページ・コンテンツの視覚的安定性(CLS)を指す。

体験の「幅」と「深さ」の視点で常に変化する領域

CCI:

そもそもの話に戻りますが、UXデザインについて、いったいどういったことを指すのか、検討する領域についてなど、私たち業界内でも曖昧に理解されているように思いますが、その点はどうお考えですか。

渡邉:

私自身の考えでは、カチッと定義が決まっている感じはしていなくて「ユーザーの体験全て」という風に考えています。今は技術の発展に伴い、ユーザー体験に対して事業者側が関与できるタッチポイントも拡大しており、UXデザインの領域も拡張しています。


以前は、スマホの体験はスマホ内で完結していて、スマホの中でどうやって楽しむかでしたが、今ではスマホを中心に物理デバイスと連携したり、O2Oマーケディングで店舗でもスマホを通して様々なサービスを受けることが可能になりました。よって、各タッチポイントで部分最適化するというよりも、全体最適なデザインがUXデザインに求められているといえますね。

こうしたタッチポイントの増加は、いわゆる体験の「幅」と捉えることができます。そしてもう一つ、「幅」に加え、体験の「深さ」も、より深くユーザーを知ってリッチな体験を提供していく上で重要ですね。

ビックデータとAIの台頭によって、同じアプリにもかかわらず、1人ひとりが異なるコンテンツを消費し、より深い体験を楽しむことができるようになりました。とはいえ、データが増大し、スマホが飛躍的に進化する一方、人間の処理能力は変わっていません。

CCI:

確かにビッグデータを活用すれば、無限に様々な情報をユーザーに届けることが可能ですね。その中で、最適化できるコンテンツをいくつ見せるか、何を届けるかという選択とコーディネートも大事ということですね。

渡邉:

そうですね。これはUXデザイナーとデータサイエンス的な部分の融和が求められるところですが、膨大なデータを使い、何をどう見せるか、何を体験させるかをセレクトし、創り上げていくところもUXデザインの検討領域であると思います。

このように、UXデザインの領域は、体験の「幅」と「深さ」の視点で常に変化し続けているので、スナップショット的にUXデザインの領域を定めることは非常に難しいと思いますね。

CCI:

これまで以上に、社会環境、技術に柔軟に対応するための幅広い専門性と、ヒトに対する深い理解が非常に重要になってくるということですね。

ヒトのニーズや能力に対して
深い知識、洞察を持つことが大事

CCI:

現在UXデザインについては、制作会社やIT会社、コンサル会社など、様々なプレイヤーが存在していますが、THE GUILDさんの得意とする領域や手法について教えていただけますか。

渡邉:

THE GUILD 自体はUXコンサルティング、UXデザインを始め、リサーチデザイン、データ分析、アプリやWeb制作、システム開発など幅広い支援を行なっています。UXデザインは、あくまで「ヒト」を対象とする行為であると考えていて、人に対する深い知識や洞察をベースに、各プロフェッショナルがそれぞれの専門知識を生かして協業しています。


「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、THE GUILDの強みとして、「木も森も、徹底的に見る」というスタンスと言えるかもしれません。「森を見る」では、定量サーベイやデザインリサーチから、市場感やインダストリートレンドと言った全体を俯瞰することを大事にしています。競合サービスについても、もちろん徹底的に洗い出しをします。「木を見る」では、観察やインタビューを通じて定性的に深くユーザーを理解することで、良い体験を創る上での鍵となるインサイトの抽出をします。こうして得た大局観、深いインサイトを、そのまま解像度高くシームレスにUXデザインに移行できるのが、THE GUILDの強みです。


また、サービスを作って終わりではなく、その後もサービスに寄り添ってグロースをサポートすることも行い、中長期的なお付き合いをすることも多いです。実情として、このプロセスが分断されているケースが多く、情報の伝達がデザインフェーズに伝わっていないというケースをよく聞きます。THE GUILDでは、こうした課題を解決できると思っています。


CCI:

確かに、一気通貫でできるという点は強いと思いますね。メディアにおいても完全にコンテンツを作る人、広告を売る人、UIを変える人のように役割が分かれているところも多く、目的がバラバラなので、深く知った上で施策やコンセプトメイクをしていくのが難しい場合があります。

組織にUXデザインを取り入れる上で重要なこと

渡邉:

ユーザーの体験を考え、そこに何かしらの施策をしているのであれば、それはUXデザインであると言えます。ですから、取り入れること自体は非常に容易だとは思います。しかし、「良い」UXデザインをするためには、上述したように森を見ながら木を見て、そこで得た情報の解像度を落とさず、スピーディーにUXデザインに繋げていくことが非常に重要です。


そのためには、部署間を横断した風通しの良い組織作り、それをリードする旗振り的な人を持つことによって、一気通貫のプロセスを確立することが大事になってくると思います。特に旗振りに関しては、社内にそのような人材がいないケースが多いので、外部パートナーと協業してそうした仕組みを作っていくという流れは、今後増えてくだろうと考えています。


CCI:

おぼろげだったUXデザインの領域や思考が理解できました。環境、技術に柔軟に対応するための幅広い専門性と、ヒトに対する深い理解が非常に重要であると思います。

次回以降では、UXデザインの好事例を挙げつつ、さらに各項目に掘り下げてインタビューをさせていただければと思います。


本日はありがとうございました。

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