オイシックス ・ラ・大地株式会社様、株式会社THE GUILD様

【Media UX LAB連載コラム 第2回】
ユーザーの行動を深く理解し、顧客体験の改良に取り組む。 メディアビジネスにおけるUXデザインとは

  • オイシックス ・ラ・大地 海外事業部長
    /Oisix Hong Kong Co., Ltd. 董事長(代表)
    /上海爱宜食食品贸易有限公司 Oisix Shanghai 執行董事(代表)

    白石 夏輝

  • 株式会社THE GUILD

    渡邉 真洋

モノ消費からコト消費へ。デジタル中心のユーザーオリエンテッドなサービスが求められている中で、UXデザインを取り入れる企業が成功を収めています。

第2回コラムでお話をうかがうのは「これからの食卓、これからの畑」をミッションに、食材宅配のサブスクリプションビジネスを展開するオイシックス・ラ・大地株式会社。顧客の「目的」と「満足」を正確に把握しながら、顧客体験にまで想像を巡らせ、ビジネス構築やサービス開発を行なっています。

今回はOisix上海法人CEOの白石夏輝様をゲストにお招きし、サービスにUXデザインを取り入れる取り組みについてお話いただきました。

サブスクリプションのコアは、顧客が継続して価値を享受し続けられるか

CCI:

まずはオイシックス様のビジネスの概要について教えてください。

白石:

オイシックス・ラ・大地は、有機野菜等の安全性に配慮した食品をお届けする宅配事業で、「Oisix」や、「大地を守る会」、「らでぃっしゅぼーや」の3ブランドを展開しています。「これからの食卓、これからの畑」という理念で、素敵な食卓をどう実現するか、日本の一次産業をどう強くしていくかを念頭に置いてビジネスを構成しています。


それぞれターゲットは異なりますが食材宅配、定期宅配は同じ。その他、店舗事業や保育園向けの宅配事業。香港、中国、アメリカの海外市場へも進出しています。

CCI:

最近はインターネットで食品を購入するのも当たり前となり、時代とともに消費行動も変わってきましたね。

白石:

そうですね。2000年の創業時は「安心・安全な野菜をネットで買う」というこれまでにない通販スタイルで注目を集めましたが、現在はライフスタイルの変化などにより、2013年に販売を開始したミールキットが主軸商品となってきています。調理の時短に加え、必要な食材が必要な分だけセットになっている点も支持されています。


とはいえ、食品のEC化率はまだまだ低く、業界全体の10%にも満たない状態です。お客様にインタビューをしてみると、ネットでモノを買うのは効率的だけれども、スーパーに行くという行動自体がリフレッシュになったり、実際に見て買った方がいろいろな気づきや安心感がある、という声が結構多いんです。そのため、自社にしかない価値や、オンラインだからできる価値を高めていくことは、私たちの事業で大切なポイントだと考えています。

渡邉:

デジタルコンテンツの場合だと、一度サブスクで申し込んだらなんとなく、もしくは無意識に続けがちですが、食は物理的なので、定期的に家に届くことで存在を認識する機会がある。また消費しないと冷蔵庫で腐ってしまったりします。ユーザーは、デジタルコンテンツに比べ、よりサービスの継続に対してかなりシビアな判断をしそうですね。

白石:

昨今、サブスクモデルはあらゆる分野で多くなってきましたが、私たちが考えているサブスクリプションというのは、言い換えれば、「お客様が享受し続けたい価値をつくる」ということです。サブスクは、ビジネス的な側面で見ると、事前にコミットしていただけるので収益が見えやすいという売り手側の事情もありますが、基本的にはお客様がある価値を継続的に享受するための仕組みであり、価値づくりに目を向ける必要があるということ。そこはすごく意識しています。

顧客の声は直接聞き、インタビュー内容はまとめずにすべて書き起こす

CCI:

顧客が価値を感じられるサービスを作っていくために、特に取り組んでいることを教えてください。

白石:

私たちの大きな特徴は、経営陣から現場までお客様の声をしっかり聞くというカルチャーが徹底しているということですね。社長を含め、社員自らがお客様のご自宅に伺ったり、直接お会いしてインタビューするという活動を創業以来ずっと続けています。


オイシックスには、お客様を知る人の意見が一番正しいという価値観を大切にしています。事業課題と向き合うときには、過去の経験則や社員の自らの意見を元にディスカッションするのではなく、まずはお客様はどう考えているのか、をファクトベースで捉えていきます。

社内では、「それはお客様が言ってたの?」とか、「どういう人が言ってたの?」ということを頻繁に問われます。データやお客様の声に基づいた話であることが、何よりも重要なんです。新卒でもベテランでも、年次は関係なく、とにかくお客様のことをよく理解している人の意見が尊重されますね。


インタビューやアンケート、電話調査など、さまざまなデータが毎週集められますが、定性的な部分と定量的な部分、両方を見たうえで、打ち手やアイデアを出していくというプロセスです。

渡邉:

定性調査は、誰かが取りまとめたものを社内で回遊していく過程で、情報の「鮮度」が失われていくことが多々あります。インタビューで得たお客様の声について、「鮮度」を保ったままチームに共有し、施策に生かす取り組みはありますか。

白石:

担当者や関係者が“直接話を聞く”ということが基本スタンスですね。その際も、大人数になりすぎて、逆にお客様が話しにくい状況にならないよう、一部のメンバーは別室で音声を聞くようにするなど、現場は少人数で話しやすい環境を作っています。


インタビュー後の社内共有でも、“お客様が話したことをまとめないこと”が大切です。サマリーになってしまうと、発信の仕方も受け取り方も、人によって認識がだいぶ違ってしまう。お客様が言っていたことは全部聞いて、全部書き起こします。“お客様の声”をUXに反映するのであれば、温度感を把握することがすごく大事だと思います。

独自のポイントシステムを活用し、UXの改善度を可視化

渡邉:

お客様の体験を向上する上で、改善すべきKPIの設定や、定期的な活動のルーティンは組まれていますか。

白石:

さまざまな事例がありますが、1つあげるとすれば、毎週カスタマーサポートに寄せられる声を分析する「お客様満足度向上委員会」があります。すべての声に目を通してレポーティングし、社長と各ファンクションの責任者が全員出席するミーティングにて、改善策を話し合います。


課題解決に向けて部署ごとKPIや活動が相反することもあるので、意見がぶつかったりもしますが、トップが入って方針を掲げ全体の動きをまとめていく…という構造になっています。

CCI:

様々なユーザーの声を拾い、すべてを取り入れていくのは難しいと思いますが、UXの改善がどのように反映されたか、また顧客満足度はどのように図っているのでしょうか。

白石:

NPSと解約率をきちんと見ることですね。改善については、独自で「改善ポイント」というものを設定していて、ポイントの実行数に対して解約率が寄与しているか、アクションポイントと結果を両方見ながら運営しています。たとえば、改善まで時間がかかるのはポイント数が大きく、すぐに実行できる課題は小ポイント…といった具合です。


改善数よりもポイント数を意識していて、目標のポイント数を達成するには、大きな改善も実行しなければならないという設定になっているので、クロスファンクションも動くし、大きな改善も小さな改善も両方回していけるようなシステムを作っています。

声を大事にするというのは、継続者の特性を理解することでもあり、離脱者にとって何がボトルネックになったのかを知ることにもなります。逆にオイシックスを使ったことがない人に対しても、どういう理由で使わないのか、どういう理由で他のサービスを利用しているのかを理解した上で、私たちが提供すべき価値、サービスを進化させていく。もちろん、今の価値で満足いただいているお客様にもしっかり狙いを定めて、さらに新しい利便性や楽しみを作っていきたいと考えています。

ユーザーの声を大切にし、組織全体で方向性を定めれば、違う角度から道がひらける場合も

CCI:

新規のお客様を獲得するための施策についても教えていただけますか。

白石:

現在の軸は、認知度も高まってきたミールキット「Kit Oisix」ですね。共働き夫婦など忙しい人たちをターゲットに、アメリカでも好感触ですが、6年ほど前に販売を開始した頃は何をやっても全く売れませんでした。ただし、使ってみた人の満足度はとても高かったんです。ある時、Webに動画の説明を入れたらコンバージョンが2倍になりました。そこでわかったのは、ミールキットで料理を作るというイメージ自体がお客様の中になかったのが原因だと感じたんです。

CCI:

確かに、それまで体験したことがない、理解ができないものをいきなりオンラインで買うって、けっこうハードルが高いことですよね。

白石:

しかも、当時は食のEC化率が4%程度。オンラインで食材を買うというカルチャーもほとんど根付いていませんでした。そこで、ミールキットの訴求を一切やめ、今まで通りオイシックス=おいしい野菜という定着したイメージを基本線にして、ミールキットはその中に無料で入れてしまおうと。まずは無料で配って体験者を増やすことを基本コンセプトにしたことで道がひらけました。

渡邉:

今の話は面白いですね。使ってみた人は少ないけれど満足度が高いモーメントは、施策を打っていると実は多い気がしています。メディアビジネスでも、何か施策を打っても、PVが伸びなければ止めちゃおうということになりがちですが、オイシックスさんのように深くユーザーを探っていけば、PVは低いけれど、満足度が高いからもう少し違う角度でやってみようという議論になるかもしれない。

白石:

そうですね。だから、満足度の高いプロダクトとそれを支持してくれるユーザーがいれば、その規模感をどのようにうまくプロダクト改善やコミュニケーション改善を図っていくべきなのか、を模索し続けるっていくことが大事だと思いますね。

CCI:

部署ごとにKPIが違ったり、人によってバラバラだったり。そういう意味でいうと、会社として一つの方向性を定めて、トップがしっかり旗振りする。それがまさにUXの課題なのかもしれません。

渡邉:

多くのビジネスで「ユーザーの体験を高めることが重要である」ということがなんとなく見えてきてはいますよね。するとお客様の声を聞こうというのがUXを考えるときに初手としては出てくるのですが、それだけでは運用が回らない。きちんと指標に落として計測できるようにしたり、組織の体制に落としこむということが大事だなと感じました。

オフライン体験とのギャップを埋めるためのUIデザイン

CCI:

オフラインのUXについてお話を伺ってきましたが、Webサイトに落とし込んだ時にどのような視点でUIの改善をされていますか。実際の取り組み事例を教えていただけますでしょうか。

白石:

やはり食材を買うという行為は、もともとオフラインがメインの体験だったものなので、それをオンライン化させた時に感じてしまうネガティブな違和感やギャップをいかになくすかを解いたことがありました。例えば、スーパーでパッと見てわかる食材などのサイズ感がオンラインだと急にわからなくなってしまう。でも、普段の買い物をするときに「価格とサイズ感などをみてコスパの良い商品を選びたい」という心理ってあると思うんです。そこで、オンラインで食品を売るときに、どのように表現すれば、何と比べれば商品のサイズがわかりやすいかを徹底的に考えました。お皿の上、手のひらの上、定規を横に置いてみるのがいいのか…。



お客様からの問い合わせが多い「商品のサイズがわからなくて買いづらい」という声をゼロにしようと、サイズ感がわかりそうな写真のパターンをいくつも実験し、商品ごとに最適な写真パターンを当てはめていくことで、最終的にほとんどお問い合わせがなくなりました。その上で、次にログインの面倒くささなど、Webサイトが使いづらいという声もなくしていこうと。事業のボトルネックを一番の重点ポイントにして細かく分解する。それをきちんと理解した上で、一つひとつUIに落とし込んで問題を改善していきます。

CCI:

ブレイクダウンして丁寧に見ていくということですね。

白石:

定期会員になりたての方や初めて使う方は、離脱のリスクが高いと同時に、逆に「食材宅配ってこんな感じなんだ!」という認知形成がしやすい傾向があります。お客様に新しい習慣を根付かせるためにも、深いブランドの理解を促したり、サービスで使いづらいと感じる部分をできる限り減らしたり、その時期のお客様に早期に成功体験を提供することを意識しています。それらの施策も、もちろん継続しているお客様や離脱してしまったお客様からのヒヤリングがベースとなっています。

CCI:

生活に密着した「食」にかかわるUI/UXについて非常に興味深くお話をうかがわせていただきました。最後に今後取り組んでいきたいことについて教えてください。

白石:

いま私自身が先頭に立って目指しているのは、アジアのマーケットで日本発のミールキットのプロダクトを展開していくこと。そのための足がかりとして約3年前から中国へ進出しています。日本とはアプローチの手法が異なるので、食習慣や行動習慣を理解して紐解いて中国でも愛されるサービスを着実に根付かせていけたらいいなと考えています。

CCI:

本日はありがとうございました。

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