株式会社fluct様、株式会社THE GUILD様

Media UX LAB連載コラム 
【第4回】 自社ユーザーの理解を深めることで切り拓く… メディアにおけるUXと広告の理想の在り方

  • 株式会社fluct

    後神絵里奈

  • 株式会社THE GUILD

    渡邉真洋

モノ消費からコト消費へ。近年、ユーザーオリエンテッドを掲げ、お客様ファーストのニーズが高まる中、上質なユーザー体験を阻害する要因の代表格として語られがちな「広告」は一方で、メディアビジネスにとっては切り離せない存在でもあります。

Media UX LAB第4回のコラムでは、UXと広告の両輪に焦点をおき、UXデザインにおいて広告はどうあるべきか、その捉え方や関係性について、UXエキスパートである株式会社THE GUILD/渡邉真洋様とメディアの広告を取り扱う株式会社fluct/後神絵里奈様にそれぞれの視点からお話しいただきました。

メディアが感じているサイト内広告に関するUX上の問題点

CCI:

はじめに、株式会社fluctの事業や特長を教えてください。

後神:

fluctは、「パブリッシャーの課題解決と成長」を基点にした広告プラットフォーム事業を展開しており、近年はGoogle Ad Managerを中心としたプログラマティック広告の運用戦略立案やデータ構築から純広告メニュー設計などの広告収益を最大化するコンサルティングが主幹サービスのひとつとなります。


「広告を貼るだけでOK」の時代が終わった今、運用だけでなく、ユーザーとメディアの両視点を大切にしながら、広告設計から配信結果のふり返り、次の施策の提案など、顧客メディアのPDCAをトータルでサポートしています。メディアごとに、そのコンセプトや運営方針は多種多様です。ヒアリングをしっかり行い、企業理解をした上で支援するため、提供サービスは多岐に渡っています。

CCI:

メディアへのヒアリングを重ねるなかで感じる、メディアが抱えやすい課題にはどんなものがあげられるでしょうか?

後神:

ほとんどの場合、どのメディアも「広告収益の最大化」を第一に望まれます。もちろん、ノーロジックで広告枠を増やしたり、派手なフォーマットや人の目を引く過激なクリエイティブを掲載すれば、広告収益を増やすことは容易です。


しかし、今回のテーマにある通り、それらは良質なUX体験と相反する場合も少なくありません。メディアブランドを毀損しない、バランスのよい広告の在り方を課題とされているメディアは、少なくないと思います。

渡邉:

様々な広告の枠やフォーマットがあるなかで、メディア側ではどのような観点で広告の善し悪しを判断しているのでしょうか。

後神:

ご担当者の経験則や、他媒体での掲載実績、ユーザーが受ける印象での判断が多いように感じています。以前はオーバーレイ広告やインタースティシャル広告は、ユーザーに与える印象の影響度が大きいことから避けられる傾向にありましたが、他媒体での実績や数字がある程度判明したことで、承認いただく例も増えています。


また、最近では特にクリエイティブを細かくチェックしブロック対応をするメディアも増えています。広告規制が強化されているとはいえ、人間の口腔内画像や、鼻腔画像、毛穴の拡大画像など、あまり視野に入れたくない画像を使った広告が存在するのは事実であり、それらの広告はメディアのブランディングにマイナスなイメージを与えかねません。しかし一方で、こうした広告とコンプレックス商材の相性はよく、CTRやCVRも高いため、デマンドのクリエイティブ基準を満たしているのであれば広告を出稿する側としては採用せざるを得ません。

CCI:

効果が高い広告クリエイティブは、ともすればサイトデザインを棄損してしまう可能性も高い。メディアが広告収益を必要とする以上、そうした矛盾をできる限り解消するためのUX施策も大切になるわけですね。

後神:

渡邊さんに伺いたいのですが、メディアの広告を扱う際に、UXの観点から注目すべき数値やデータにはどんなものがありますか?

渡邉:

回遊率などの実行動データに加えて、メディアブランドとして重要な定性的なデータにも注目するべきかと思います。広告量の増加によるブランド毀損については、ブランド調査を定期的に回しながら、定点で確認することが考えられますが、広告は日々運用しているので、数値と調査内容との紐付けが難しい。たとえば、新しい広告フォーマットの実装前後など、サイト内広告を大きく変えたタイミングでまずは実施するといいでしょう。


広告によるブランド毀損についての懸念は、どんなメディアでもつきまとう問題です。そこについてチームでの共通認識が持てないと、無駄な議論などが発生してしまいます。もし棄損度が低いことがわかれば、広告のボーダーラインについての肌感覚を養うことにも繋がります。

広告への許容度はユーザーごとに様々…広告接触の選択肢を用意できるかがカギに

CCI:

メディアにおいて、良質なユーザー体験と広告を共存させるための具体策は、何かあるのでしょうか。


渡邉:

先ほど後神さんもおっしゃっていましたが、広告がUXを阻害してしまう部分は否めないと思います。極論をいえば、UXを重要視するなら広告を削除すればいい。なので「可能な限りの両立」を目標として考えた場合になりますが、「意味のない広告」を減らすことが、ユーザー体験の阻害を減らす策になるかと思います。たとえばサイト内に重複する広告です。追われている、しつこいという印象は拭えないし、効果自体も期待できません。

「コンテキストに沿った広告」はUXを阻害しにくい一例です。たとえばマンガアプリにおけるマンガを活用した広告。「マンガを一話読み終える」という主体験の後に、似た体験のできる広告が表示されるので、タイミング的にも相性がいいといえるでしょう。

後神:

マンガアプリでいうと、広告を見たら1話分のポイントを付与してもらえる…という仕組みも、ユーザーと「Win-Win」の関係ですよね。

渡邉:

そうですね。広告の許容範囲というのは、ユーザーによって異なります。広告を見てポイントをもらうのか、時間が経つのを待って無料で見るか、お金を払ってみるか…複数の選択肢をユーザーに提供しており、上手いと思います。ユーザーベネフィットが明確な(広告を見れば、次の話が見れる)漫画アプリならではの強みでしょう。


しかし、メディアサイトの場合は広告枠が固定されるので、ユーザーに選択肢を与えるのは難しい。極端ではありますが、Wikipediaの寄付広告のように、なぜ広告が必要なのかをユーザーに対して明示する…というのもありなのではないかと思っています。「このコンテンツを無料でみるために、広告が出ている」という納得感をユーザーに与えるわけです。ただ、この場合には、ユーザーが広告を見てもなお、欲しくなるくらいの良質なコンテンツをその先に用意できるかどうかが重要です。

CCI:

ある種の煩雑さが独自性として機能している一部のメディアサイトもあるかと思います。サイトの煩雑さのおかげで、逆に広告が違和感なく入り込んでいる…という例もあるのではないでしょうか。

渡邉:

そうしたメディアは、自社のユーザーをよく知っているメディアだといえるかもしれません。たとえば、インターフェイスが大きく違う大手ショッピングサイト2社の顧客満足度を比べると、実は同程度だったりします。まず何より、自社のユーザーが何を求めているのかを深く理解することが重要なのです。


それは広告についても同様で、お金を払ってでも広告を見たくない人もいるし、記事中のバナーは許せても、オーバーレイ 広告は嫌…といったように、広告に対する許容範囲はユーザーごとに違います。広告の種類から有無まで、ユーザーに合わせて多種多様な選択肢を用意することが、最終的には有効なのだと思います。

進化する広告ソリューションに合わせて高まる、ユーザー理解の重要性

CCI:

メディア視点とユーザー視点から広告について語っていただきました。最後に、メディア内広告に関するトレンドや、それに合わせたメディアの在り方も議論できればと思います。

後神:

まず、iOSにおけるプログラマティック広告の収益は年々下降傾向にあります。プライバシー対策のため3rdパーティCookieが、Appleデバイスの標準ブラウザであるSafariでは使用できなくなっていることが大きな要因です。


Androidも2023年以降3rdパーティCookieが規制される可能性があるため、メディアとしてはクリック率が高い過激なクリエイティブに目をつぶったり、広告枠のサイズを大きくしたり、新しい広告フォーマットを積極的に採用して売上を少しでも担保している状況です。メディアのブランディングを維持しながら広告をバランスよく共存させる方法については、今後も引き続き課題になっていくと考えています。

※fluctAdXを提供している媒体社のiOSにおける平均CPM推移


一方で、それぞれのユーザーに合わせたカタチで広告を配信するサービスも始まっています。fluctが販売パートナーを務める、ユーザーによって広告枠を最適化できる「Browsi」がそれに該当するツールの一例です。ブラウジングする速度やスクロールの量などのデータを取得し、AIを使ってユーザーごとの閲覧行動を予測、広告枠の位置や数を自動で最適化しページRPM(※Browsi適応枠の売上/PV)を向上できるツールです。Browsiは1stパーティCookieを利用するので、3rdパーティCookieの規制にも左右されない点もメリットが大きいと考えています。


実際、導入した媒体社様のデータでは、Browsi導入前後で枠単体でのページRPM が121.9〜186.9%向上いたしました。

Browsiはビューアビリティが高い位置に広告枠を移動/複製できるため、この枠を純広告メニューとして活用できるなど、単なるページRPMを向上させるツールに留まりません。また、Browsi導入前後でページ滞在時間や再訪率といったユーザーのエンゲージメントに関連した数値に変化は見られませんでした。


媒体社は収益を最大化、広告主は広告効果を最大化、ユーザーにとっては広告体験の最適化ができるため、個人的に素敵なソリューションだと考えています。

※Browsi機能のABテストを行った際のCWVの数値変化(BrowsiOptimization:Browsi機能を使用/No Optimization:Browsi機能を不使用)

CCI:

メディア側には、今後どういった運営が求められていくでしょうか。

渡邉:

YouTubeやSpotifyなども始めましたが、広告が出ない有料モデルを提供する…という選択肢もトレンドになってきています。それにより、“無料だから広告がある”という共通認識も浸透し始めているのでは無いでしょうか。その流れに乗りつつ、海外メディアはそれぞれが自身の独自色を前面に出し、新たなマネタイズの方法を模索しているように感じます。

後神:

そうですよね。長期的に見れば、収益源は広告一本足ではない方がいい。メディア側も、ECサイトを作ってファン層を囲い込んだり、有料制のプレミアムコンテンツを提供したりと、動きは起こり始めていると感じます。問題は、海外と違い、コンテンツに対する課金の意識が低い日本で有料のコンテンツが馴染むのか、馴染むにしても時間がかかりそうなところだと思います。

渡邉:

確かに、日本ではアグリゲーションサービスが強いのは懸念点ですね。メディアサイトを複合的に横断できるアプリもあり、各メディアの記事がパッと読める今の状況は、強いロイヤリティを持っているメディアが少ないことの裏づけでもあります。現在無料のメディアが有料の仕組みを取り入れ、ユーザーに受け入れてもらうには、自社ユーザーのさらなる理解、提供コンテンツのクオリティ、仕組みづくりと、越えるべきハードルは多いですね。

CCI:

従来の「広告によるマネタイズ」についてはどうでしょうか。

渡邉:

枠の販売ではなく、メディアコンセプトをはっきりさせて、タイアップやスポンサー広告の拡大を狙う道もあるかと思います。運用型広告に比べて高単価で、ブランド毀損も起こりにくい。メディアとしての立ち位置を明らかにして、付加価値広告をとっていく戦略をとるメディアもありますね。

後神:

これまでUX領域の専門家とお話しをすることがなかったので、今日は、「広告」という専門領域だけでなく、多角的な知見の重要性を実感するよい機会になりました。今後はそれぞれの知見共有の場を増やし、広告とUXの最適解を探りながら、メディア様に対する提案のクオリティを上げていけるといいですね。

CCI:

本日はありがとうございました。

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